TeX/LaTeX に初めてふれる方へ

このページへ来た方の多くの方は,おそらく既に Microsoft Word などのワープロソフトを使った経験があるでしょう。 そこで,ここでは「ワープロソフトしか使ったことがないが,新たに LaTeX に興味を持った(もしくは LaTeX を使うことになった)方」のために説明しようと思います。

☆以下の記述は,大友さんによる「ワープロユーザーのための LaTeX 入門」の

という項目から移植しました。パブリックドメインにしていただいていたことに感謝します。



ワープロソフトから LaTeX へ

あなたは文字中心の文書作成にワープロソフトを使っていて,こんな風に感じた経験はありませんか?

「一生懸命作った割には,あんまりぱっとしないな」

もちろん,図をふんだんに使う社内報の類であれば,満足のいくものを作ることもできるでしょう。 しかし,(これが意外に多いのですが,)図をちょっとしか使わない文字中心の文書を作る場合に,十分に整ったデザインの文書を作るのはちょっと大変です。 たとえば,レポートとかはその代表格でしょう。

もちろん,Word で美しい文書を作る事はできない,とは言っていません。 Word をお持ちの方は,LaTeX の文書(PDF 形式,6ページ)と,この LaTeX 文書を手本に作った Word の文書(リッチテキスト形式,1ページのみ抜粋)の両方を,印刷した上で見比べてみてください。 Word も決して捨てたものではありません。

さて,ここで登場した Word 文書ですが,見出しの大きさを設定したり,適切な空白を開けたりとなかなか面倒でした。 Word での VBA や「スタイル」の設定かなんかを使えば,ある程度の自動化・一括処理も可能かもしれませんが,私はどうすればいいのかよく知りません。 しかしそれ以前に,普通は見出しの設定など,個人レベルでそこまでこだわってる時間はないでしょう。 広告の文書ではないので,ワードアート等を駆使して LaTeX の苦手な図画処理に走る,ということもしにくいところです。

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一方で,LaTeX の文書はどうだったでしょうか。 人にもよるでしょうが,上の例ならおそらく,それほど出力に差は感じないかもしれません。 しかし,ファイル全体を眺めていただければさらにわかってくると思います。 LaTeX 文書は,見出し部分に統一感があり,文字列と飾り枠だけでかなり満足のいくレベルを実現しているのです。 文字だけなので一見地味ですが,じっくり見ていくと,本を読んでいるかのような出力に感じられるかもしれません。 それもそのはず,LaTeX は数式部分を筆頭に,本を作ることができるレベルの出力を得ることが出来るからです*1

LaTeX の基礎を築いている TeX の作者クヌース (Knuth) 氏は,自分の著書を書くために TeX を作っているのです。 現在,アメリカ数学会では TeX や LaTeX を使って原稿を作ることを求めていますし,日本でも岩波,技術評論社,白水社,シュプリンガー・フェアラーク東京などなど,実際に LaTeX が使われている出版社があるほどです。

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また,他にも LaTeX は拡張機能を自由に付けることが出来るという利点があります。 ワープロソフトの場合,アドインレベルでは対応できない新しい機能を付けて欲しいときには新しいバージョンが出るまで待ち,発売されたらお金を出して買わねばなりません。 それに,自分の欲しい機能が次のバージョンで出るとは限りません*2。 LaTeX の場合,「漢詩作成機能」なんかも無料で配布されていますし,他にもインターネットをくまなく探せば,名刺を作るパッケージ,化学構造式を描くパッケージ,ドイツの古本を再現可能なパッケージなど,面白いパッケージがたくさんあります。

さらに,文書を編集する環境を自由に選べるという利点もあります。 ワープロソフトで文書を作る場合,(当たり前ですが)ワープロソフトで作らなければなりません。 そうすると,動作の「重さ」も何とかして欲しいものですし,基本的に背景色が白の環境での文字入力ですので,目にもあまり優しくありません*3。 他にも不満はいろいろあるでしょう。 LaTeX なら,メモ帳をはじめ,テキスト文書を作れるソフトウェアならどんなソフトウェアからでも作ることが出来ます。 極端な例では,Word ではテキストファイルで保存できますので,かろうじて OK です。 しかし,普通はインターネットやパソコンショップで手に入る,テキスト文書やプログラムを書くのに適した「テキストエディタ」という種類のソフトウェアを使うでしょう。 これなら自由に背景色を変えるなど,カスタマイズが利くことが多いです(ちなみに「メモ帳」もテキストエディタです) 。

フリーの環境で電子文書らしい PDF 文書を作れるなど,LaTeX の魅力はこれだけにとどまりません。 しかし,この解説ではまだ LaTeX が具体的に一体どんなソフトウェアなのか分からないと思います。 そこで,次は「LaTeX とは何か」を説明しましょう。

LaTeX は「ワープロソフト」?

もし,「ツールバー上のボタンを押したりすると即座に文字が太く見える」などといった機能を「ワープロソフト」というのであれば,LaTeX はワープロソフトではありません。 もちろん文字を太くすることは LaTeX にも可能ですが,マウス・クリックでその機能を実現するのではないのです。 具体的には次のようにします。

\textbf{太い文字}

こんな風に,本文の文字に対して,これまた「文字」によるコマンドで指定してあげます。 そして,その命令を解釈するソフトウェアが,実は LaTeX なのです。

LaTeX は命令を解釈し,DVI ファイルにその結果を書き込みます。 ですから,LaTeX というソフトウェアの上で文字を書くのではありません。 文字を入力できるソフトウェアなら,何を使っても LaTeX への「命令」の入った文章を書けるのです(だから「メモ帳」でも出来るのである)! じゃあどうやってその命令の解釈結果を表示するのかといいますと,DVI ビューアという種類のソフトウェアがあるのです。 例えば,dviout for Windows や xdvi がそれにあたります。

また,命令の解釈結果を表示できるソフトウェアは DVI ビューアに限りません。 解釈結果の DVI ファイルを PostScript (PS) という形式に変換すれば Ghostscript というソフトウェアで表示・印刷できますし,PDF という形式にすれば,多くのパソコンにプリインストールされている Microsoft Edge あるいは Adobe Acrobat Reader DC といったソフトで読むことが出来るようになります。Adobe Acrobat Reader DC は Microsoft Word とは違い,持っていない方でも無料で入手可能です。 最近では,TeX 以外の世界ではあまり一般的でない DVI ファイルを経ずに直接 PDF ファイルを作ろうという動きもみられるようになりました。

ウェブページをメモ帳等のテキストエディタで作ったことのある方なら,HTML をご存知のことでしょう。 LaTeX も HTML も,「文字」のみでレイアウトの命令を指定していく,「マークアップ言語」というものの一種なのです。

「こんな英語みたいなコマンドは覚えなきゃいけないの?」という質問が出てくるかもしれませんが,今はとりあえず「意識して覚えなくても,ソフトウェアと小技で何とかなる」とでも答えておこうと思います。

LaTeX の値段はどれくらいするの? LaTeX はどこで手に入るの?

0円,つまりタダで手に入れることが出来ます。 関連ソフトウェアや LaTeX の拡張機能もすべてタダで手に入ります。 最新版はインターネットで手に入れることが出来ますが,超初心者の方々には厄介かもしれません。 そこで,お金はかかりますが,LaTeX の参考書(本)に付属する DVD-ROM から LaTeX をインストールするとよいかもしれません。

LaTeX は難しい?

LaTeX の基本的な項目は,決して難解なものではありません。 BASIC や C 言語みたいなプログラミングの経験者でなくても,大丈夫です。 LaTeX のテキストを作成するために作られたソフトウェアやちょっとした小技を使えば,英語のコマンド類を覚える必要もありません。

さて,どうしますか?

というわけで,LaTeX についての基本的な紹介をしました。 他にも数え切れないほどの特徴があります。 タダですし,ハードディスクに余裕があれば,試しに始めてみてはいかがですか?

この TeX Wiki の中には,TeX/LaTeX に関する情報,それも最新のものがたくさん詰まっています。 はじめて LaTeX に触れる方から,より TeX/LaTeX の知識を深めたい方,さらには TeX 関係ソフトウェアの維持開発に関わる方,あらゆる方の助けとなるでしょう。

LaTeX をはじめようと思いたった方へ

これから LaTeX を使ってみようという方は,LaTeX 入門に足を運んでみましょう。 そこでは LaTeX の基本的な使い方が解説されていますので,参考になるでしょう。

関連リンク

本項目と同様に,簡単に LaTeX について紹介した文章(外部リンク)を挙げておきます。


*1 しかしながら,普段から Word で美しい文書を書くよう心がけている方(もしくは美しい文書が書ける方)なら「Word の方がきれいだ」という方もいらっしゃるかもしれません。LaTeX で作ったレポートを見て「本みたいだ」と言う方が多かったこともあり,かなりの確信をもって「LaTeX の方がきれいだ」と書いているに過ぎません。このあたりは,ある程度個人の主観によるところなので,美的判断は個人にゆだねるのが原則です。
*2 たとえば,国語の教師なら喉から手が出るほど欲しい「漢詩作成機能」なんておそらく出ないでしょう。
*3 友人は,背景をいったん黒にしてから最後に再び白に戻している,といってました。

Last-modified: 2016-04-18 (月) 00:57:25 (823d)