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LaTeX における図表の取り扱いにはワードプロセッサなどの文書作成ツールと異なる特徴があり,注意が必要です。 ここでは,実習をとおして LaTeX における図表の扱い方を理解していきましょう。
まずは簡単な実習として,PNG 形式の図を挿入してみましょう。
例えば apple.png (426x496) を挿入するには graphicx パッケージを使用して次のようにします。
\documentclass{jlreq} \usepackage{graphicx} \begin{document} まだあげ初めし前髮の/林檎のもとに見えしとき/前にさしたる花櫛の/花ある君と思ひけり \includegraphics[width=5cm]{apple.png} \end{document}
これで apple.png が PDF ファイルの中に挿入されます。
上の例は PNG 形式の図を挿入しましたが,JPEG 形式や PDF 形式の図も同じようにして挿入できます。
図を入れるには,まずプリアンブル (\documentclass と \begin{document} に囲まれた部分) に
\usepackage{graphicx}
を付け加え,図を入れたい箇所に
\includegraphics[width=幅]{ファイル名}
を挿入します。 TeX ファイルを保存し,lualatex コマンドで処理して PDF にします。 図のファイルも文書ファイルと同じところに保存しておかなければなりません。
このままでは図は文字と同じように左から全角1文字下がったところに入ります。 図を中央揃えしたい場合は,
\begin{center} \includegraphics[width=5cm]{apple.png} \end{center}
のようにします。すぐ下に文字を入れる場合は
\begin{center} \includegraphics[width=5cm]{apple.png} \\ 林檎の図 \end{center}
のようにします。
実際の論文やレポートでは,図にキャプションや図番号を入れるために,次のようにします。
\begin{figure} \centering \includegraphics[width=5cm]{apple.png} \caption{林檎の図} \end{figure}
なお,上の \begin{figure} 〜 \end{figure} の中の \centering の代わりに \begin{center} 〜 \end{center} で囲む方法でも同様の効果が得られます。 その場合にはいくらかの間隔が自動的に挿入されますが,これを余分と判断なさる方は \centering の方を使ってください。
ただし,論文中の図の位置はコンピュータが決めますので,必ずしもこのように書いた位置に入るとは限りません。 これが嫌なときは,プリアンブルで
\usepackage{float}
と宣言しておき,図を入れるところでは
\begin{figure}[H]
のように大文字の [H] を付けておきます。
このような図表の配置については次節で説明します。
LaTeX では文書中に図表を配置することができます。 一口に“図表"といってもその内容や形式はさまざまです。 たとえば
などがありますが,LaTeX では文書に挿入する図表の中身やファイル形式などは設定しだいでさまざまなものに対応できます。
ここで,心に留めておくべき点があります。 それは
画像の取り込みという処理は TeX 自身ではなく,“pdf ファイルの中に書き込まれた画像の取り扱いに関する指示”を LuaLaTeX などのソフトウェアが解釈する,という仕組みになっている
ということです。 LaTeX としては,その図表を版面(紙面)に配置するためにどれくらいの幅と高さを確保するかだけを問題としています。 LaTeX は
などには頓着しません。 ファイル形式などが問題となるのは,LaTeX で処理した組版結果を実際に表示したり印刷したりするソフトウェアにおいてです。
このように,LaTeX では「TeX 自身にできないことを,ほかのソフトウェアの拡張機能に頼って実現する」ということがよくあります。 いま出てきた graphicx パッケージのほかにも,後の相互参照とリンクで取り上げるハイパーリンク(hyperref パッケージ)や,文字や図に色をつける color パッケージや xcolor パッケージもそうした例の一つです。 より詳しくは TeX と「TeX 以外」を参照してください。
LaTeX における画像の扱いについてはこのページのほかにも
などに解説があります。
図の作り方については PDFの作り方#図の描き方 を参照してください。
最終的に PDF 形式で出力したい場合は,図も PDF 形式で用意しておくのが便利です。 PDF 形式を使えば,Ghostscript が呼び出されることがないので,処理が速くなります。
たとえば apple.pdf という PDF 形式の図があった場合,次のようにすれば図が挿入できます。
\documentclass{jlreq} \usepackage{graphicx} \begin{document} まだあげ初めし前髮の/林檎のもとに見えしとき/前にさしたる花櫛の/花ある君と思ひけり \includegraphics[width=5cm,pagebox=cropbox,clip]{apple.pdf} \end{document}
ここで,pageboxオプションには使用するbounding boxの種類を指定します。 これは画像ごとに適切に選ぶ必要がありますが,たいていはcropboxで大丈夫でしょう。
挿入したい図の PDF ファイルに余白がある場合は,TeX Live に収録されている pdfcrop で削除できます。
PDF ファイルの bounding box 情報に関する注意点など,詳しくは PDFの作り方 の挿入図ファイルについてを参照してください。
例えば apple.png (426x496) を使うには,プリアンブルに
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
を記述すれば OK です。 PNG / JPEG 形式の画像はそれぞれ
\includegraphics[width=5cm]{apple.png}
\includegraphics[width=5cm]{apple.jpg}
のようにして挿入できます。