* TeX/LaTeX に初めてふれる方へ [#v43e0cab]

このページへ来た方の多くの方は,おそらく既に Microsoft Word などのワープロソフトを使った経験があるでしょう。
そこで,ここでは「ワープロソフトしか使ったことがないが,新たに LaTeX に興味を持った(もしくは LaTeX を使うことになった)方」のために説明しようと思います。

☆以下の記述は,大友さんによる「ワープロユーザーのための LaTeX 入門」の

-[[LaTeX とは? — 初めての方のために (Internet Archive):http://web.archive.org/web/20090410194947/http://www.klavis.info/bigina.html]]

という項目から移植しました。パブリックドメインにしていただいていたことに感謝します。

// Public Domain と明記されていましたので,勝手ながら TeX Wiki に移植してみました。
// 最小限の改変は加えてあります(見出し・最近あまり聞かないソフトの名称)。
// TeX Wiki も Public Domain ですし,大丈夫ですよね?
// 誰の利益も損なわない,むしろ大きな利益を生むと期待しています。
// インターネットアーカイブにしか残っていなかったのですが,
// 非常に読みやすくかつ有用な説明ですので検索エンジンに引っ掛からないのが
// 大変もったいないと思いました。 -- アセトアミノフェン (2015-06-09)

'''[TODO]''' 図(四箇所)だけは移植完了していません。

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#contents
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** ワープロソフトから LaTeX へ [#q45c5eed]

あなたは文字中心の文書作成にワープロソフトを使っていて,こんな風に感じた経験はありませんか?

「一生懸命作った割には,あんまりぱっとしないな」  

もちろん,図をふんだんに使う社内報の類であれば,満足のいくものを作ることもできるでしょう。
しかし,(これが意外に多いのですが,)図をちょっとしか使わない文字中心の文書を作る場合に,十分に整ったデザインの文書を作るのはちょっと大変です。
たとえば,レポートとかはその代表格でしょう。

もちろん,Word で美しい文書を作る事はできない,とは言っていません。
Word をお持ちの方は,[[LaTeX の文書:http://web.archive.org/web/20090410194947/http://www.klavis.info/iofvor.pdf]](PDF 形式,6ページ)と,この LaTeX 文書を手本に作った [[Word の文書:http://web.archive.org/web/20090410194947/http://www.klavis.info/iofvor.rtf]](リッチテキスト形式,1ページのみ抜粋)の両方を,印刷した上で見比べてみてください。
Word も決して捨てたものではありません。

さて,ここで登場した Word 文書ですが,見出しの大きさを設定したり,適切な空白を開けたりとなかなか面倒でした。
Word での VBA や「スタイル」の設定かなんかを使えば,ある程度の自動化・一括処理も可能かもしれませんが,私はどうすればいいのかよく知りません。
しかしそれ以前に,普通は見出しの設定など,個人レベルでそこまでこだわってる時間はないでしょう。
広告の文書ではないので,ワードアート等を駆使して LaTeX の苦手な図画処理に走る,ということもしにくいところです。

[図:Microsoft Word の出力例]

一方で,LaTeX の文書はどうだったでしょうか。
人にもよるでしょうが,上の例ならおそらく,それほど出力に差は感じないかもしれません。
しかし,ファイル全体を眺めていただければさらにわかってくると思います。
LaTeX 文書は,見出し部分に統一感があり,文字列と飾り枠だけでかなり満足のいくレベルを実現しているのです。
文字だけなので一見地味ですが,じっくり見ていくと,本を読んでいるかのような出力に感じられるかもしれません。
それもそのはず,LaTeX は数式部分を筆頭に,''本を作ることができるレベルの出力''を得ることが出来るからです((しかしながら,普段から Word で美しい文書を書くよう心がけている方(もしくは美しい文書が書ける方)なら「Word の方がきれいだ」という方もいらっしゃるかもしれません。LaTeX で作ったレポートを見て「本みたいだ」と言う方が多かったこともあり,かなりの確信をもって「LaTeX の方がきれいだ」と書いているに過ぎません。このあたりは,ある程度個人の主観によるところなので,美的判断は個人にゆだねるのが原則です。))。

LaTeX の基礎を築いている TeX の作者クヌース (Knuth) 氏は,自分の著書を書くために TeX を作っているのです。
現在,アメリカ数学会では TeX や LaTeX を使って原稿を作ることを求めていますし,日本でも岩波,技術評論社,白水社,シュプリンガー・フェアラーク東京などなど,実際に LaTeX が使われている出版社があるほどです。

[図:LaTeX の出力例]

また,他にも LaTeX は''拡張機能を自由に付ける''ことが出来るという利点があります。
ワープロソフトの場合,アドインレベルでは対応できない新しい機能を付けて欲しいときには新しいバージョンが出るまで待ち,発売されたらお金を出して買わねばなりません。
それに,自分の欲しい機能が次のバージョンで出るとは限りません((たとえば,国語の教師なら喉から手が出るほど欲しい「漢詩作成機能」なんておそらく出ないでしょう。))。
LaTeX の場合,「漢詩作成機能」なんかも無料で配布されていますし,他にもインターネットをくまなく探せば,名刺を作るパッケージ,化学構造式を描くパッケージ,ドイツの古本を再現可能なパッケージなど,面白いパッケージがたくさんあります。

[図:漢詩作成マクロ]

さらに,''文書を編集する環境を自由に選べる''という利点もあります。
ワープロソフトで文書を作る場合,(当たり前ですが)ワープロソフトで作らなければなりません。
そうすると,動作の「重さ」も何とかして欲しいものですし,基本的に背景色が白の環境での文字入力ですので,目にもあまり優しくありません((友人は,背景をいったん黒にしてから最後に再び白に戻している,といってました。))。
他にも不満はいろいろあるでしょう。
LaTeX なら,メモ帳をはじめ,テキスト文書を作れるソフトならどんなソフトでも作ることが出来ます。
極端な例では,Word ではテキストファイルで保存できますので,かろうじて OK です。
しかし,普通はインターネットやパソコンショップで手に入る,テキスト文書やプログラムを書くのに適した「エディタ」という種類のソフトを使うでしょう。
これなら自由に背景色を変えるなど,カスタマイズが利くことが多いです(ちなみに「メモ帳」もエディタです) 。

フリーの環境で電子文書らしい PDF 文書を作れるなど,LaTeX の魅力はこれだけにとどまりません。
しかし,この解説ではまだ LaTeX が具体的に一体どんなソフトなのか分からないと思います。
そこで,次は「LaTeX とは何か」を説明しましょう。


** LaTeX は「ワープロソフト」? [#c10aafd7]

もし,「ツールバー上のボタンを押したりすると即座に文字が太く見える」などといった機能を「ワープロソフト」というのであれば,LaTeX はワープロソフトではありません。
もちろん文字を太くすることは LaTeX にも可能ですが,マウス・クリックでその機能を実現するのではないのです。
具体的には次のようにします。

 \textbf{太い文字}

こんな風に,本文の文字に対して,これまた「文字」によるコマンドで指定してあげます。
そして,その''命令を解釈するソフト''が,実は LaTeX なのです。

LaTeX は命令を解釈し,DVI ファイルにその結果を書き込みます。
ですから,LaTeX というソフトの上で文字を書くのではありません。
''文字を入力できるソフトなら,何を使っても LaTeX への「命令」の入った文章を書ける''のです(だから「メモ帳」でも出来るのである)!

じゃあ何でその命令の解釈結果を表示するのかといいますと,命令を解釈した結果は,下図のように DVI ビューアという種類のソフトが表示します。
ここでは DVI ビューアとして,dviout for Windows を使って説明することにします。
また,命令の解釈結果を表示できるソフトは DVI ビューアに限りません。
解釈結果の DVI ファイルを PostScript (PS) という形式に変換すれば別のソフトで表示・印刷できますし,PDF という形式にすれば,多くのパソコンにプリインストールされている Adobe Reader というソフトで読むことが出来るようになります(Microsoft Word とは違い,持っていない方でも無料で入手可能です)。

[図:dviout での表示]

ウェブをメモ帳等のエディタで作ったことのある方なら,HTML をご存知のことでしょう。
LaTeX も HTML も,「文字」のみでレイアウトの命令を指定していく,「マークアップ言語」というものの一種なのです。

「こんな英語みたいなコマンドは覚えなきゃいけないの?」という質問が出てくるかもしれませんが,今はとりあえず「意識して覚えなくても,ソフトと小技で何とかなる」とでも答えておこうと思います。


** LaTeX の値段はどれくらいするの? LaTeX はどこで手に入るの? [#j4038274]

0円,つまり''タダ''で手に入れることが出来ます。
関連ソフトや LaTeX の拡張機能もすべてタダで手に入ります。
最新版はインターネットで手に入れることが出来ますが,超初心者の方々には厄介かもしれません。
そこで,お金はかかりますが,LaTeX の参考書(本)に付属する DVD-ROM/CD-ROM から LaTeX をインストールするとよいかもしれません。


** LaTeX は難しい? [#me9c2ae1]

LaTeX の基本的な項目は,決して難解なものではありません。
BASIC や C 言語みたいなプログラミングの経験者でなくたって,大丈夫です。
LaTeX のテキストを作成するために作られたソフトやちょっとした小技を使えば,英語のコマンド類を覚える必要もありません。


** さて,どうしますか? [#s2e656e3]

というわけで,LaTeX についての基本的な紹介をしました。
他にも数え切れないほどの特徴があります。
タダですし,ハードディスクに余裕があれば,試しに始めてみてはいかがですか?

// ここまでが大友さんの文章からの移植部分(一部改変有)です。
// 以下は TeX Wiki 向けの書き下ろしです。 -- アセトアミノフェン (2015-06-09)

この TeX Wiki の中には,TeX/LaTeX に関する情報,それも最新のものがたくさん詰まっています。
はじめて LaTeX に触れる方から,より TeX/LaTeX の知識を深めたい方,さらには TeX 関係ソフトウェアの維持開発に関わる方,あらゆる方の助けとなるでしょう。


** LaTeX をはじめようと思いたった方へ [#g46a30dc]

これから LaTeX を使ってみようという方は,[[LaTeX 入門>LaTeX入門]]に足を運んでみましょう。
そこでは LaTeX の基本的な使い方が解説されていますので,参考になるでしょう。
-LaTeX のインストールについて:[[TeX 入手法>TeX入手法]]に詳しく説明されています。
-LaTeX 向けの「エディタ」について:[[TeX 用統合環境・エディタ>TeX用エディタ]]で紹介されています。


** 関連リンク [#he1bc813]

本項目と同様に,簡単に LaTeX について紹介した文章(外部リンク)を挙げておきます。

-[[文系人間のためのやさしい LaTeX 入門 ―はじめに―:http://ideas.paunix.org/latex/latex_1.htm]](文系のマカーにも「使える」LaTeX)
-[[TeX,LaTeXとは? --Introduction to LaTeX--:http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texfaq/intro.html]](かなり古い;奥村先生の文章)
-[[TeX/LaTeX の心構え:入門者から上級者まで:http://acetaminophen.hatenablog.com/entry/2015/04/26/062419]] (Acetaminophen's diary)