*フォントの埋め込みとライセンス [#x49ed9c0]

PDF が広く文書配布フォーマットとして普及すると共に、フォントを文書ファイルに埋め込む機会も増え、また近年の様々な Web フォントサービスの登場もあり、何らかの形でフォントを文書の表示側に、一時的にでもダウンロードさせたいという要求は増大しています。ここではフォントを文書に埋め込む際のライセンス上の制限に関する情報を提供します。

自宅で文書を閲覧するのみといった、ごく個人的なフォントの利用では、ライセンス上の制約はほとんどないと考えられるので、ここでは、フォントを埋め込んだ(PDF)ファイルを、特に不特定多数の人間に配布する状況について議論します。

フォントを PDF などのファイルへ埋め込めるかどうか、そしてそのファイルが配布可能かどうかの、最終的な判断はフォントの提供元が定める規則に従ってください。
新たにフォントを入手されたときには、そのフォントに付属の EULA (エンドユーザ使用許諾契約) をよく読んで理解したうえで使用してください。

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**OpenType フォント一般 [#da02bb50]

OpenType とフォントにはフォントファイルの中にフォントの埋め込み許可に関する情報が記載されています.
dvipdfmx など多くのプログラムは、この情報を読み取り埋め込み可能かどうか判断します。
Microsoft による [[OpenType の仕様書:http://www.microsoft.com/typography/otspec160/os2.htm#fst]] によると、以下のような埋め込み許可フラグが設定可能となっています。

-''埋め込み不許可'':このライセンスのフォントは著作権保有者の許可なしには、いかなる形でのフォントの受け渡しを禁止しています。
-''表示と印刷可'':フォントは表示と印刷のために用いる場合にのみ埋め込むことができます。
-''編集可'':"表示と印刷" に加えて文書を受け取った側はこのライセンスのフォントを含む文書を編集することができます。
-''インストール可'':フォントを文書に埋め込んで配布することができ、それを受け取った側は文書の表示・印刷・編集が可能です。また受け取った側は、埋め込まれたフォントをパソコンに恒久的にインストールすることができ、そのフォントに関してフォントの元の入手者 (文書の配布者) と同じ権利を保有するとともに同じ EULA の制限を受けることになります。
-''サブセット不可'':埋め込む際にフォントのサブセット化を許可しません。
-''ビットマップのみ'':フォントファイル中にビットマップデータが存在する場合は、それのみ埋め込みを許可します。アウトラインデータの埋め込みは許可されません。

文書の受け手に "表示と印刷" '''のみ'''を許可するには,文書を暗号化により保護するしかありません.
また OpenType/TrueType の仕様書は "インストール可" の場合を除き,文書からフォントを抽出しシステムに恒久的にインストールすることを禁じています(許可された目的のために一時的にインストールすることは可能).

OpenType/TrueType フォントファイルに記載できるフォントの埋め込み許可情報は簡易なもので、具体的な条件に関する詳細な記述はできません。特に商用利用についての付加的な条項などを記載することができないため、フォントベンダは別途、EULA などで条項を記載している可能性があります。
このため詳細については、必ずそのフォントの EULA を参照するようにしてください。

**Adobe のフォント [#i7e13683]

Adobe のフォントに関しては,Adobe のサイト "[[フォントの埋め込みや編集などに関する許可:http://www.adobe.com/jp/type/browser/info/embedding.html]]" を参照してください.
なお,Adobe Reader に付属の小塚フォントは Adobe Reader からの利用のみが可能ですので dvipdfmx など他のソフトウェアで流用することはできません.注意してください.

**Microsoft Windows に付属のフォント [#j63557cf]

MS 明朝・MS ゴシックに関して,かつてはフォントを埋め込んだ文書を (不特定多数の人間に) 配布することはライセンスに抵触するのではないかという議論がありました.
しかしながら,フォントの利用に関して供給元であるリコーと Microsoft の見解に変化があったようです ([[ゆず屋:[豆知識] MS明朝,MSゴシックは(今は)商用利用できる:http://yuzuya.style.coocan.jp/blog/archives/2010/12/22223803.php]]) ので再度調査が必要です.

Windows 標準搭載フォントのうち Microsoft に著作権があるものに関しては,"[[マイクロソフトの著作物の使用について:http://www.microsoft.com/ja-jp/mscorp/legal/permission/default.aspx]]" によると,Windows の使用許諾契約書内にあるフォントの条項で規定されているようです.
Microsoft による[[ライセンス条項のページ:http://www.microsoft.com/ja-jp/mscorp/legal/useterms/]]からたどれる"マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項" には (Windows 7 Professional の場合)

>· フォントの埋め込みに関する制限の下で許容される範囲でコンテンツにフォントを埋め込む.

ことが許可されるとの記載があります.
"フォントの埋め込みに関する制限の下で許容される範囲" というものが何を指しているのかは不明です.
また,別のサイト "[[Microsoft Typography - Font Redistribution FAQ:http://www.microsoft.com/typography/RedistributionFAQ.mspx]]" にはフォントの "プロパティー" (フォントファイルの上で右クリック) の詳細のタブにある "フォント埋め込み可能" の項目を参照するように書かれています.
この情報はおそらく dvipdfmx がフォントの埋め込みの際に参照するライセンス情報と同じものです.

**Mac OS X 付属のフォント [#v7d4fa37]

OS X に関しては,Apple による[[ハードウェアおよびソフトウェア製品規約:https://www.apple.com/jp/legal/sla/]]のページを参照してください.
"[[OS X(Mountain Lion 10.8.2)ソフトウェアライセンス:https://www.apple.com/legal/sla/docs/OSX1082.pdf]]" の p.41 には

>E. フォント 本契約の契約条件に従って,お客様は,Appleソフトウェアの起動中にコンテンツ
を表示およびプリントするために,Appleソフトウェアに入っているフォントを使用することが
できます.しかし,お客様は,問題になっているフォントに付属する組み込み制限が許諾する場
合のみ,コンテンツの中にフォントを組み込むことができます.これらの組み込み制限は,Font
Book/プレビュー/フォント情報を表示,においてご覧になれます.

との記載があります.