*楽譜 [#z503491d] 綺麗な楽譜を作成する方法を説明します. このページには,TeX を用いて実装された MusiXTeX と,かつて TeX を直接用いていた LilyPond の解説があります. ---- #contents ---- *[[MusiXTeX:https://ctan.org/pkg/musixtex]] [#l0a501fd] -[[WIMA: Werner Icking Music Archive:http://icking-music-archive.org/]] 総本山。 --[[MusiXTeX and Related Software:http://icking-music-archive.org/software/htdocs/index.html]] -https://ctan.org/pkg/musixtex **MusiXTeX とは [#r3b8c608] TeXで楽譜を書くための拡張マクロパッケージです。ASCII表記での綴りはMusiXTeXです(Xは大文字が正しい)。 歴史的には、MusicTeXをベースにして、音符の横幅の割付方法を改良した(TeX内部で計算できる内容には限度があるので、処理を外部実行ファイル musixflx に任せて細かい処理を行えるようにした)のがMusiXTeXです。(&color(red){Musi};cTeX + MusicFle&color(red){x}; = MusiXTeX) ライセンスは(ver.T.104以降)GNU GPL v.2 or laterです。 **履歴 [#y424375c] 公式最新バージョンは 1.27 (2017-12-26) です。 主著者である故 Daniel Taupin 氏自身が最後にまとめたバージョンはT.112です。その後、バグ修正やwell-known拡張パッケージの同梱(T.113・T.114)、e-TeX拡張への対応(T.115→1.15)、フォント取扱の現代化その他(1.16)等の活動が、TeX-music Maliling List のコミュニティによって続けられています。 **インストール [#zdd8bb18] TeX Live, W32TeX には最初から MusiXTeX がインストールされています. //手動でのインストール(ここでは、総本山からgetしたT.115を用いて説明します)は,おおむね以下のようにします。 //+書庫を適当な一時ディレクトリに展開します。多数のサブディレクトリができます。その最上位にできる musixdoc.pdf がマニュアル(英語)です。なお、2008/01/01現在CTANにある書庫は musixdoc.pdf のPDF化手段と書庫内位置の違いだけで、他の全ファイルやこれ以下のインストール手順は同一です。 //+doc ディレクトリの中身はドキュメントとそのソースファイルです。これらは適当な場所にコピーします。 //+tex ディレクトリ内の全ファイルを $TEXMF/tex/generic/musixtex/ に入れます。(ディレクトリがない場合は新規作成、以下同様) //+fonts/mf ディレクトリ内の METAFONT ソースを $TEXMF/fonts/source/public/musixtex/ (W32TeX の場合) または $TEXMF/fonts/source/public/musixtex-fonts/ (TeX Live の場合) に入れます。 //+fonts/tfm ディレクトリ内の tfm ファイルを $TEXMF/fonts/tfm/public/musixtex/ (W32TeX の場合) または $TEXMF/fonts/tfm/public/musixtex-fonts/ (TeX Live の場合) に入れます。 //+fonts/type1 ディレクトリ内の Type1 PSフォントを $TEXMF/fonts/type1/public/musixtex/ (W32TeX の場合) または $TEXMF/fonts/type1/public/musixtex-fonts/ (TeX Live の場合) に入れます。 //+dvips ディレクトリ内の musix.map を $TEXMF/fonts/map/dvips/musixtex/ (W32TeX の場合) または $TEXMF/fonts/map/dvips/musixtex-fonts/ (TeX Live の場合) にコピーし(これは必ず $TEXMF 配下にする)、コマンドラインから updmap --add musix.map(或いは、updmap-sys --enable Map=musix.map)を実行します。 //+dvips ディレクトリ内の psslurs.pro を $TEXMF/dvips/musixtex にコピーします。 //+(W32TeX, TeX Live 以外の場合)systems ディレクトリ内から適切な musixflx の実行ファイルを選ぶか、必要により musixflx.c を自分で再コンパイル(gccなら gcc -O2 musixflx.c -o musixflx, MSVCなら cl /MD musixflx.c )し、PATH の通ったディレクトリにコピーします。(W32TeX, TeX Live には musixflx.exe が含まれているので何もしなくてOK.W32TeX には musixflx.exe が web2c-w32.tar.xz に含まれています.) //+システムによっては必要により texhash ないし mktexlsr を実行します。 // //これにより、MusiXTeX本体、Type1フォント、歌詞をサポートするmusixlyrパッケージ、dvips依存命令でスラーをPS化するmusixpsパッケージが導入されます。 // //上記で$TEXMFのかわりに$TEXMFLOCALにインストールしても良いですが、/fonts/map/dvips/musixtex/musix.map (W32TeX の場合) または /fonts/map/dvips/musixtex-fonts/musix.map (TeX Live の場合) は updmap との関係上、必ず$TEXMFにコピーする必要があります。 MusiXTeXは楽譜を作成するのに3パスの処理を必要とします。また,LaTeX文章中に楽譜の例を引用する場合を除いて,LaTeXではなくplain TeXを使います。 例えばfoo.texがあるとすれば + euptex foo + musixflx foo + euptex foo のように実行します。 和文フォントを適切に追加定義して (e-)(u)pTeX を用いることができます。定義がない場合、和文フォントがdviドライバのデフォルト(通常10pt明朝体)で置換され欧文フォントに比べて小さくなったり、抜け落ちたりしてしまいます。必要な定義の入手はリンク欄を参照ください。 ドキュメントの PDF 版(バージョン T.102)を &ref(https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texfaq/musixdoc.pdf,ここ); に置いておきます(約 700 KiB)。 ドキュメントの日本語版は [[MusiXTeX (MusicTeX) による楽譜ライブラリ:http://www.mab.jpn.org/musictex/]] (M.A.B.) の [[MusiXTeXの日本語版マニュアル:http://www.mab.jpn.org/musictex/musixtex_j.html#MusiXJdc]] にあります。古いバージョンT.98相当ですが、内容の大部分は現在でも有用です。 多数の拡張パッケージが,[[Werner Icking Music Archive:http://icking-music-archive.org/]] の [[MusiXTeX and Related Software:http://icking-music-archive.org/software/indexmt6.html]] から得られます。 **[[PMX:https://ctan.org/pkg/pmx]], [[M-Tx:https://ctan.org/pkg/m-tx]] [#w4e7f46d] PMX は MusiXTeX のプリプロセッサです。 [[Werner Icking Music Archive:http://icking-music-archive.org/]] の [[MusiXTeX and Related Software /software/pmx:http://icking-music-archive.org/software/pmx/]] が現在の一次配布元です。 これは MML に似た文法で記述するので,MusiXTeX そのままの文法で記述するよりはるかに効率良く楽譜を作成できます。[[MIDI:https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/midi/]] も生成できます(ただし同一パートの複数のタイが処理できない等の制限有り,専らデバッグ用の機能)。 最新版はver.2.83 (preview release) です。ver.2.6以降の系列は、24パートまでの組版に対応するかわりにMusiXTeX T.115以降とe-TeX拡張を含むTeXが必須となっています。 M-Tx は PMX のさらなるプリプロセッサで,歌詞の取り扱いを容易にします。 最新版は0.63です。0.63から、一次配布元が [[GitHub:https://github.com/dlaurie/M-Tx]] に変わりました((0.62までは [[Werner Icking Music Archive:http://icking-music-archive.org/]] の [[MusiXTeX and Related Software /software/mtx:http://icking-music-archive.org/software/mtx/]] が一次配布元でした。))。 なお、M-Txの24パート拡張版は残念ながら存在せず、PMX ver.2.6以降との組み合わせでも12パートまでの対応となります。 Windowsの場合、PMX、M-Txとも、TeX Live, W32TeX に含まれています。 //Linux に PMX をインストールするには、PMXを解凍し、Makefile を適宜修正(GCC の場合には、Makefile の先頭あたりに // FC = gfortran //を追記)して // make // su // make install //します。 PMX、M-TxともASCIIを前提としたプログラムです。M-Txは問題がないが、PMXはいわゆるShift JIS backslash(0x5c)問題があります(inline literal TeX stringまたはTeX string and terminatorと誤認)。現在ではUTF-8で記述し(e-)upTeXを使うのが回避方法となるでしょう。Shift JISのままでいくならば、M-Tx段階での歌詞記述で「ソ」は「{ソ}」、「ソ{}」などと記述する必要があります。 PMX使用時の和文フォント定義は、.texファイルと同じところに ファイル名.mod というファイルを作成し、その中で和文フォント定義を \input すれば、.texファイルを毎回書き換えることなく対応可能となります。この手法は他の独自定義マクロの追加等にも使えます。 // 以下はソフトウェアの説明では無く動作サンプルのため、subsubsectionとして独立させました。 *** PMX事始めサンプル [#be2b0a4c] では、[[結城さんのページ:http://www.hyuki.com/dig/music.html]]にあるサンプルをコンパイルしてみましょう。私はきらきら星のソースをmozart.mtxと名づけてテストしました。(日本語の歌詞も扱えるのですね!) del mozart.mx2 prepmx mozart pmxab mozart euptex mozart musixflx mozart ptex2pdf -e -u mozart 最初のmozart.mx2の削除については、初めてコンパイルしたのであれば行う必要がありません。ただし、修正後の再コンパイル時には絶対に行ってください。 TeXとは関係ありませんが、MIDIも作ってみましょう。先ほど作ったM-Txソースの一行目(プリアンブル部であればどこでも良い)に、次のように書いておきます。 PMX: I Iの後ろにオプションをつけることで、音色などを変更することが出来ます。(詳細はマニュアルをご覧ください。)楽譜作成の流れと同様にprepmxコマンドで処理します。 prepmx mozart pmxab mozart を実行することで、mozart.midが生成されます。 // 以下、わざわざPMXでMIDIを作らずともフリーのMIDIシーケンサーがあるわけですし、TeXと携帯着メロはあまりにも無関係すぎるので、コメント化しました。 //出来上がったMIDIファイルを携帯電話の着メロにしてみるのも楽しいかもしれません。VodafoneやAUの方は[[SMF to SMAFコンバータ:http://smaf-yamaha.com/jp/tools/downloads.html]]、DoCoMoの方は[[着メロコンバータ:http://red.kakiko.com/kana/]], [[MIDIToMLD [Internet Archive]:http://web.archive.org/web/20090225231737/http://tokyo.cool.ne.jp/ittake/java/java.html]]をお使いください。 **関連リンク [#e3c7a328] *** 本体・使い方関係 [#k8684b0a] -[[MusiXTeX - Wikipedia>Wikipedia.ja:MusiXTeX]] -[[竜棲まう図書館:音楽室:http://ryusuma.web.fc2.com/music_room/]] -[[MusiXTeX (MusicTeX) による楽譜ライブラリ:http://www.mab.jpn.org/musictex/]] (M.A.B.) [[MusiXTeXの日本語版マニュアル:http://www.mab.jpn.org/musictex/musixtex_j.html#MusiXJdc]] があります。 -[[MusiXTeXによる楽譜の組版:http://kuuku.no.coocan.jp/pub/musixtex/index.html]] 日本語フォントの定義,Yet Another スラーのPS化,各種Tipsなど -[[MusiXTeX: ひよぴよの日々:http://hiyohiyo.asablo.jp/blog/cat/musixtex/]] -[[score:http://tonomu.la.coocan.jp/score/score.html]] -[[備忘のための MusiXTeX ノート:http://maucamedus.net/musixtex.html]] (まうかめ堂) -[[MusiXTex日記>http://egf.air-nifty.com/forest/musixtex/]] (Ever Green Forest -- blog) -[[MusiXTeXによる楽譜ライブラリ:http://idoido.jpn.org/strings/musixtex.html]] (Idogawa さん) -[[MusiXTeX入門 [Internet Archive]:http://web.archive.org/web/20050305192737/http://yoneda-www.cs.titech.ac.jp/~kota/mxt/mxt_a01.html]] (Kitamura Kota さん) -[[TeX、MusiXTeX、PMX導入記:http://www3.ocn.ne.jp/~yes.sato/dounyu.htm]] -[[PMX 事始め:http://pt2k.xii.jp/doc/pmx/]] 入門編 -[[PMXで楽譜作成:http://ynomura.dip.jp/archives/2009/11/pmx.html]] *** WYSIWYGエディタ関係 [#t1f8f370] -[[Canorus:https://sourceforge.net/projects/canorus/]] 開発が終了した NoteEdit の後継プロジェクト。Windows/macOS/Linux で動作する。MusiXTeX の出力もできるようである。(下記 LilyPond やその他の形式出力も多数サポート) *** MusiXTeX以外のTeXベース楽譜組版システム [#t1acb611] -[[The Gregorio project:http://gregorio-project.github.io/]] グレゴリオ聖歌の組版。LuaTeXまたはOmegaを応用して1パスの組版を可能にしているとのこと。 -[[OpusTeX:http://www.muri-gries.ch/OpusTeX/]] MusiXTeX の弟分ともいえる存在で、MusiXTeX の副著者 Andreas Egler 氏が、MusiXTeX の機能拡張方針やライセンス条項を巡って故 Daniel Taupin 氏と何らかの対立をし、開発ブランチを分岐させたもの。ライセンス制約が強い。旧 MusicTeX に対する上位互換性を意図的に断ち、グレゴリオ聖歌組版の改善等の独自新機能を組み込むことを意図していたが、バグを多く残したまま1998年(ver.0.84)以降長年にわたり開発停止状態にある。頭記リンク先(2015/04/04現在)にはベータ版ver.0.93が存在するものの、Egler氏は関与を打ち切った模様である。 なお、本家MusiXTeX T.113 以降に同梱されるようになった PostScript Slurs (Type K) は、元々は OpusTeX 用に作られたものである。 -[[GuitarTeX:https://sourceforge.net/projects/guitartex/]] (ギターに特化したもの) *[[LilyPond:http://www.lilypond.org/]] [#k98806cb] [[LilyPond:http://www.lilypond.org/]] はオープンソースでクロスプラットフォームの楽譜作成ソフトウェアです。 当初はバックエンドにTeXを用いて楽譜の組版をしていましたが、2005年頃からPDF/PostScript直接出力となり、楽譜を作成するだけであればTeXと直接関係のない(([[Requirements for running LilyPond:http://www.lilypond.org/doc/v2.19/Documentation/contributor/requirements-for-running-lilypond]] なお、フォントは当初METAFONTで書かれたものが現在でも使われており、ドキュメントはTexinfoでの記述である等、開発者レベルではTeXとの関係が今でもあります。これは、LilyPondの前身がMusiXTeX用プリプロセッサMPPであったことにも由来しています。))システムとなっています。 LaTeXやTexinfoのソース内に楽譜のソースを埋め込んでおき、TeXを利用して楽譜を含んだドキュメントを作成することのできる、lilypond-bookというスクリプトが付属しています。 **License [#zbae2148] GPLv3 **ChangeLog [#pfdb8ffc] http://git.savannah.gnu.org/gitweb/?p=lilypond.git **関連リンク [#z66be199] -[[Ubuntu Weekly Recipe:第245回 Ubuntuで楽譜の作成と出力をする|gihyo.jp … 技術評論社:http://gihyo.jp/admin/serial/01/ubuntu-recipe/0245]] -[[Rosegarden:http://www.rosegardenmusic.com]] WYSIWYM(ean)タイプのエディタ兼シーケンサ。Linux系限定。出力はLilyPond。 -[http://ansuz.sooke.bc.ca/entry/285 lilypond-bookとLaTeXで音楽の植字] -[http://www.mutopiaproject.org/ Mutopia Project フリーの楽譜(LilyPond ソース)集] **楽譜エディタ [#z6ca9dda] WYSIWYGあるいはWYSIWYMeanタイプの楽譜エディタ。TeXとは無関係のものも含みます。 [[LilyPond – みんなの楽譜作成: より簡単な編集手段:http://www.lilypond.org/easier-editing.ja.html]] も参照。 -[[MuseScore:https://musescore.org/]] 独自WYSIWYGのみ -[[Denemo:http://denemo.org/]] -[[Frescobaldi:http://www.frescobaldi.org/]] -[[Canorus:https://sourceforge.net/projects/canorus/]] LilyPond, MusiXTeXのexport可。 -[[TuxGuitar:http://www.tuxguitar.com.ar/]] -[[LyX]] --[[Support for LilyPond-Book:http://wiki.lyx.org/LyX/NewInLyX20#lb]] -[[TeXShop]] --[[LilyPond Engines for TeXShop:https://users.dimi.uniud.it/~nicola.vitacolonna/home/software/lilypond-texshop/]] -[[Emacs]] --[[テキスト エディタ サポート:http://www.lilypond.org/doc/v2.18/Documentation/usage/text-editor-support]] -[[Vim]] --[[テキスト エディタ サポート:http://www.lilypond.org/doc/v2.18/Documentation/usage/text-editor-support]] *abc notation [#b68ebbea] -[[abc notation:http://abcnotation.com/]] アスキー文字を並べて譜面を表現できるように考案された記法 -[[abcjs:https://github.com/paulrosen/abcjs]] -[[ABC記譜法で書かれたテキストを楽譜にしてくれるJavaScript『abcjs』:http://www.ideaxidea.com/archives/2011/04/abcjs.html]] *コメント [#xfedecca] - MusiXTeXのインストールの手順ですが、dvipdfmxを使うためにはmusix.mapを適当なディレクトリーにコピーして、$TEXMF/dvipdfmx/config/dvipdfmx.cfgに f musix.map という行を追加する必要があるのではないでしょうか。 -- .. &new{2008-02-27 (水) 05:29:52}; - METAFONTファイルがあればmapファイルやType1フォントは不要ではないでしょうか. - dvipdfmxはTFMと同名のType1フォントがあれば,マップファイルがなくてもType1フォントを使います. -- uchiyama &new{2008-02-27 (水) 12:03:35}; - 出力デバイスに依存しないPDFやPostScriptファイルを作成するためにはType1フォントが必要です. -- uchiyama &new{2008-02-27 (水) 12:04:38}; #comment