* e-TeX [#hcfcdf97]

** e-TeX とは [#b5bc17ea]
The NTS (''N''ew ''T''ypesetting ''S''ystem) team によって始められた
(欧文) TeX の拡張。1999年以降は P. Breitenlohner が copyright 所有者と
なっている。Knuth オリジナルの TeX と100%の互換性を保ちながら
TeX の少々不便なところを補うような実用性の高い拡張となっている。
近年,ConTeXt や LaTeX における hyperref package など
e-TeX の拡張モードを要求するマクロ類が増加しつつある。
また pdfTeX,Aleph (Omega と e-TeX のマージ),[[XeTeX]],[[LuaTeX]] といった
主だった TeX の拡張版においても e-TeX の拡張機能は取り入れられており,
事実上の新標準とも呼ぶべき重要な拡張と言える。

** 互換モードと拡張モード [#h1a4de54]
互換モード (TeX compatibility mode) では,Knuth オリジナルの TeX と
完全に同一の動作をする。すなわち,TRIP テストが完全に通る。
拡張モード (extended mode) では,e-TeX で追加したプリミティヴなど
e-TeX の様々な拡張仕様が動作する。
拡張モードを選択するのは format 作成時である。
指定ファイル名の先頭に “*” を付けるか,あるいはオプション --etex を
付けると,拡張モードの format ファイルをダンプする。
通常 e-TeX をサポートするエンジンに対して,fmtutil.cnf では
拡張モードの format file を作成するように設定してある。

** レジスタの増加 [#c0a083b8]
様々なレジスタ (count, dimen, skip, muskip, box, token) の数が
オリジナルの TeX では256個なのに対し,e-TeX では32,768個に
拡張されている。0 から 255 まではオリジナルの TeX と同じ方法で
実現されているが,256 から 32767 までのレジスタは要求されたときに
TeX のメインメモリ領域に sparse registers として作成される。

** プリミティブの拡張 [#b966af46]
*** tracing の改良と内部状態の取得 [#v3ec6be0]
\tracingcommands などの動作が改良され,より大きな値を指定することで
より詳細な TeX の内部動作を確認できるようになった。
これに関連して \tracingifs,\tracinggroups といった条件判断文とか
グループの開始・終了状況を表示するプリミティブも追加されている。

また,TeX ソース内部でも「現在いるもっとも内側の条件判断文の深さや種類」や
グループについてのそれらなどを
\currentifbranch,\currentiflevel,\currentgrouptype,\currentgrouplevel で
調べることができる。


*** 拡張された条件判断文 [#i43dce13]
- \ifdefined, \ifcsname,..., \endcsname という
「(引数が)定義されているか」を調べるプリミティブが追加された。
- \unless という,真理値を反転させるプリミティブが追加された。

*** 「式」の表現 [#o4b25094]
\numexpr,\dimexpr,\glueexpr,\muexpr という4つのプリミティブが追加され,
それらによって整数値・長さ量・グルーを結果とする式を扱うことができる。
例えば,e-TeX のマニュアルには次のような例が載っている。
 \ifdim\dimexpr (2pt-5pt)*\numexpr 3-3*13/5\relax + 34pt/2<\wd20

*** \middle プリミティブ [#a6c61606]
TeX では,例えば
 \left( ... \right)
で括弧の大きさが中身に応じて自動調整されるのだったが,これでは
「区切り記号が3個以上のときに,全部の記号の大きさを自動調整」させるときには
面倒なマクロを組まなければならなかった。

一方,e-TeX で追加された \middle プリミティブを用いると,そのようなものも
 \left< ... \middle| ... \right>
と簡単に実現できる。

** TeX--XeT [#saadfb87]
拡張モードで \TeXXeTstate が正のときに有効となる。
組み方向で「左から右」と「右から左」の双方向が可能で,
それらの混植をサポートしている。「右から左」の場合であっても,
出力する DVI ファイルは特別な拡張の無い仕様となっている。

** 参考サイト [#y961b75c]
-[[e-TeX V2 reference site>CTAN:systems/e-tex/v2/]]
([[CTAN]]@[[Ring server>CTAN:../../../]])
-マニュアルは
[[W32TeX:http://www.fsci.fuk.kindai.ac.jp/~kakuto/win32-ptex/]] の配布にも
含まれています (See [[qa:50569]])。
-[[The e-TeX Short Reference Manual:http://tex.loria.fr/moteurs/etex_ref.html]]

** コメント [#a61ff5c1]
- 何はともあれ、作ってみました。-- ttk &new{2008-01-12 (土) 05:04:58};
- 「プリミティブの拡張」のところを加筆してみました. -- 北川 &new{2008-01-14 (月) 09:24:57};

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